卵巣と子宮を摘出する卵巣子宮摘出術や、卵巣のみを摘出する卵巣摘出手術を行うことを、「犬の避妊手術」といいます。そもそも「避妊」とは、母体の安全や繁殖の調節を目的として、何らかの方法を用いて妊娠を避けることです。
わんちゃんは生後6~10ヶ月ごろに性成熟を迎え、初めての発情が見られます。その後は個体差がありますが半年に1回程度発情が認められ、発情期間は妊娠・出産が可能になります。
避妊手術を行うことで発情がなくなり、妊娠することができなくなります。
避妊手術はいつから行えるのか
避妊手術は、早すぎると手術に耐えられる体力がついていなかったり、高齢になるほど他の病気のリスクによって手術がしにくくなったりします。また、発情が起こった後だと乳腺腫瘍のリスクが高くなるので、初回発情が起こる少し前の生後6ヶ月ごろが望ましいとされています。
ただし、発情がいつ来るかは個体差があり、手術直前に発情が来てしまう可能性もあります。その場合、発情中は通常時よりも組織が充血していて出血しやすくなるため、手術を1ヶ月ほど延期することが多いです。
メリットとデメリットについて
メリット
将来起こり得るであろう病気を防ぐことができる
卵巣や子宮を摘出することで、病気を予防することができます。また、ホルモンに関連した病気の予防や治療の目的としても避妊手術が適応になります。
生理トラブルをなくせる
わんちゃんの発情出血は、生後6~10ヶ月ごろからおよそ半年に1回見られます。
その期間は、1~2週間ほど陰部から出血が認められるため、汚れないようにマナーパンツなどをする必要があります。
発情期間中は他の雄犬を刺激してしまうことがあり、わんちゃん同士のケンカなどのトラブルが起こりやすくなります。
また、目を離した隙に交配し望まない妊娠につながってしまう恐れもあるため、散歩はなるべく他のわんちゃんのいない時間帯・場所を選ぶようにしたり、ドッグランやカフェには行かないようにするなど、トラブルを避ける行動をとる必要があります。
ストレスの軽減に繋がる
発情期は食欲や元気が減少したり、落ち着きがなくなったりする様子がよく見られます。
ホルモンの影響で妊娠していなくても妊娠したときと同じように体が変化することもあり、偽妊娠になると、ぬいぐるみやおもちゃなどを抱えてケージに持ち込んでまるで子育てをしているようにふるまったりするといった行動の変化が見られることもあります。
こうした状態になると、神経質になりストレスを感じやすくなりますので、避妊手術を行うことでこうしたストレスを防ぐ効果も期待できます。
デメリット
手術を受けることによるリスク
避妊手術は全身麻酔をかけて行うので、一定のリスクがあります。
避妊手術自体はよく行われているものですが、わんちゃんの個体差や手術を行う病院によっては危険な状態になってしまうケースもあるようなので慎重になる必要があります。
肥満のリスク
避妊手術後は、ホルモンの影響で食欲の増進や代謝カロリー量の減少が見られることもあるため、肥満になることがあります。
手術後に体重の増加が見られる場合には、フードの量を調整したり低カロリーでダイエット用のものに切り変えたりするといいでしょう。
妊娠できなくなる
当然ですが避妊手術をすると妊娠、出産ができなくなるため、それが困るような場合は手術を受けさせないという選択をとる必要があります。
避妊手術後のフード
避妊手術後の栄養管理を考えて作られた専用のごはんもあります。
避妊手術の流れ
手術前に身体検査や血液検査、レントゲン検査などを行い、麻酔をかけられる状態か確認します。
手術当日は朝ごはんは抜いて、絶食の状態で病院へ行きます。
全身麻酔をかけると嘔吐を起こすことがあり、それによる窒息や誤嚥性肺炎を防ぐためです。
注射やガスの麻酔薬を用いて全身麻酔をかけ、お腹の毛をそり消毒をし、腹部を切開し、卵巣のみもしくは卵巣と子宮を摘出します。
手術時間はおよそ30分~1時間ぐらいです。
最近は開腹せずに腹腔鏡(ふくくうきょう)で避妊手術を行う病院も増えています。
開腹手術より傷口が小さく済む点がメリットです。しかし、専用の器具や技術も必要となるようで、そもそもやってくれる病院がなかったり、費用も高額になったり、手術時間も長くなるなどのデメリットもあります。
もし希望があれば、かかりつけ医に相談し腹腔鏡手術を行っている病院を紹介してもらうといいでしょう。
開腹手術では体の負担が大きいため、1泊入院になることが多いです。
実際にもかの場合も1日入院しました。
初めての外泊で寂しくないかとか痛くなかったかとか無事に終わったかとかもう気が気じゃありませんでした。(腹腔鏡手術の場合は日帰りが可能なケースもあるそうです。)
手術後から抜糸するまでの1~2週間は、傷口をなめないように術後服やエリザベスカラーを装着します。
手術を受けさせるか慎重に判断を
避妊手術は一般的に受けたほうがいいと言われていますが、当然リスクもあるので慎重に判断しましょう。また、手術の方法も開腹なのか腹腔鏡なのかによって手術の流れも変わってきます。
もかの場合は開腹手術で無事に終わったので安心しましたが、お迎え時から術後2~3日は元気がなくなりました。
傷跡と術後のエリザベスカラーの姿もすごく痛々しかったです。
ただ、徐々に元気になってきてくれて4~5日後にはいつものもかに戻りました。
抜糸をする頃には傷跡もかなり目立たなくなってようやく本当に安心できました。
手術を行う際は、術後数日間はなるべく一緒にいる時間を長くしてあげてください。